近年の気温上昇により、現場作業の過酷さが増し、より涼しい環境で作業をしたいと考えている人も多いのではないでしょうか。なかには、空調服を着ることで、どれほどの効果が得られるのかを知りたい人もいるでしょう。
そこで今回は、空調服の着用で得られる効果や注意点を紹介します。空調服の効果を高める選び方も紹介しているので、現場作業をより快適にしたいと思っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
空調服とは
空調服とは、バッテリー駆動のファンを内蔵した作業服のことです。ファンから外気を取り入れ、蒸発した汗により身体を冷やす効果があります。
夏場の気温上昇が続くなか、冷房が効かない場所での作業時に活躍するアイテムです。従来の作業服と同様に、現場で活用できる耐久力やストレッチ性をもったものが販売されています。
空調服を着用すれば、気温をコントロールできない現場でも、快適な環境で作業を進められるでしょう。
空調服で得られる効果
空調服を着用することには、熱中症予防や事故防止につながったり、作業効率が向上したりするメリットがあります。ここでは、空調服の着用で得られる効果を詳しく紹介します。
熱中症予防になる
熱中症は、皮膚温度の上昇や疲労などが原因で、体温を調節する機能が失われることで発症します。総務省の調査によると、2023年の7月の熱中症患者が約36,000人に上り、仕事場で倒れた人は約4,000人と、全体の10%以上を占めています。
日差しが強い屋外や、締め切った室内での作業は、体温が上昇しやすく、熱中症を引き起こしやすくなるので注意が必要です。このような環境で空調服を着用すれば、体温を下げることにつながり、熱中症を予防することができます。
事故防止につながる
気温が高い環境で作業を続けていると、脳内の情報処理が適切にできなくなることで、集中力や注意力が低下してしまう場合があります。注意力が低下すると、機械操作を誤ったり、合図を間違えたりして事故を起こしてしまうリスクが高まります。
現場事故は自身がけがをするだけでなく、他人に危害を加えてしまう可能性があるので、空調服を着用して適切な環境で作業できるようにしましょう。
作業効率が向上する
空調服を着用すると、従来の作業服で作業をするよりも身体的な快適さを得られるので生産性がアップします。炎天下の作業やエアコンが故障している現場でも、暑さに邪魔されず作業を進められます。
また、熱中症や体調不良で仕事を休むことも少なくなり、周囲に迷惑をかける心配も少なくなるでしょう。
汗をかいても不快感が少ない
空調服は、ファンから取り入れた外気で汗を蒸発させることによって身体を冷やします。作業服内に汗が残らないので、ベタベタとした汗の不快感が軽減されるでしょう。
また、あせもや肌荒れなどの皮膚トラブルの予防にも効果的です。
空調服を使うデメリット・注意点
空調服を購入する際は、自身の作業環境で適切に使用できるかを確認しておくことが大切です。ここでは、空調服を使うデメリット・注意点について詳しく紹介します。
作動音が発生する
外気を取り入れるためにファンを作動させている空調服は、作動音が発生するため、事務所などの静かな場所での使用に適さない場合があります。作動音の大きさは、機種によって異なりますが、会話をしている相手に雑音として認識される程度の音が発生します。
自身の作業環境で問題なく使用できるかを、購入前に確認しておくべきでしょう。
一般的な作業服より高い
空調服は、ファンやバッテリーなどの装備品が必要になるため、従来の作業服と比べて販売価格が高くなる傾向にあります。なかには、通常の作業服より1万円以上高い空調服も販売されています。
熱中症予防を推進している県や市では、企業が空調服を購入する際の費用を補助している場合があるので、自治体の補助制度を確認してみましょう。空調服を会社が購入してくれれば、自身で空調服を購入せずに活用できるかもしれません。
現場環境によっては使用できない
ファンやバッテリーなどの電子機器が使われている空調服は、水がかかったり粉じんがあったりする現場で使えない場合があります。空調服の使用に適していない環境で使うと、感電や発火などの事故を引き起こしてしまう可能性があるので注意が必要です。
また、防爆エリアや溶接エリアで使用すると、可燃性ガスによる爆発を引き起こしたり、作業服内に侵入した火の粉でやけどしたりする原因になります。
空調服による事故を防止するためにも、取扱説明書を確認しながら使用禁止エリアで着用しないようにしましょう。
空調服の効果を高める選び方
空調服は、従来の作業服と同様に、多くの種類が販売されています。空調服の効果を最大限に高めるためには、作業内容や環境に合わせた空調服を選ぶことが大切です。
ここでは、空調服の効果を高める選び方について詳しく紹介します。
素材
空調服の代表的な素材には、ポリエステルと綿があり、作業環境に合わせた素材を選ぶことで快適に作業できます。
軽くて乾きが早いポリエステルは、洗濯や持ち運びの手間がかかりにくい特長があります。例えば、複数枚の作業服を持ち運ぶような長期出張をする場合は、ポリエステル素材が適しているでしょう。
一方、綿素材は耐久面に優れており、火に強く静電気も起こりにくい素材です。溶接や鉄鋼など、素材の強さが求められる現場で活用できます。なお、空調服の中に火の粉が入ってしまう可能性があるので、火気作業をする際はファンの電源を切っておきましょう。
空調服を購入する際は、自身の作業内容に適した素材であるかをチェックしておくことが大切です。
形状
空調服の形状は、以下の3つに分かれます。
- ベスト
- 半袖
- 長袖
作業着の形状は、作業内容や現場によって制限されている場合があるので、現場責任者に確認したうえで購入しましょう。半袖やベストを着用して、肌を露出させていると、けがや熱中症のリスクを高めてしまう可能性があります。
空調服を購入する際は、現場のルールや作業環境に合わせて適切な形状を選びましょう。
サイズ
空調服のサイズは、普段着用している作業着より大きめのサイズを選びましょう。
ぴったりとしたサイズを選ぶと、服の中で空気が循環しにくくなり、空調効果が薄れてしまいます。ただし、サイズが大きすぎると、現場作業中に障害物に引っかかってしまうことがあるので注意が必要です。
空調服を購入する際は、実際に試着してみて動きやすさや、服の袖口や腰回りの長さを確認しながら選ぶようにしましょう。
メンテナンス性
空調服に装備されているファンは、ほこりや粉じんによって故障する可能性があるので、定期的に清掃しなければなりません。
ファンのメンテナンスが手軽なものを選べば、ファンの故障を予防することができます。プロペラ部分を綿棒で掃除をするタイプが一般的ですが、ファンをまるごと水洗いできるタイプもあります。
空調服を長く使い続けるためにも、メンテナンス性にも注目しておきましょう。
機能性
空調服には、フルハーネス用のD環が付いていたり、保冷剤を入れるポケットが付属されていたりするタイプがあります。
空調服の上にフルハーネスを着用すると、空気の流れが滞ってしまうので、空調服の効果が得られにくくなってしまいます。そのようなときにフルハーネス用の空調服を選べば、空調服の中にフルハーネスを着用できるので、より快適な環境で作業が進められるでしょう。
また、高所作業をする職種の方には、ファンの落下防止ネットが付いているタイプがおすすめです。高所から落下したファンが通行人に当たると、大きな事故につながってしまいます。安全に作業をするためにも、落下防止ネットが付いているタイプを選びましょう。
さまざまな機能を備えた空調服が販売されているので、目的に合った空調服を選びましょう。
持続時間
バッテリーで動いている空調服は、作業中であっても充電が切れると作動しなくなってしまいます。過酷な現場で空調服の電源が切れると、熱中症リスクが高まってしまうので、バッテリーの持続時間を確認しておくことが大切です。
空調服のバッテリーの持続時間は、設定風量や機種によって異なりますが、4時間から10時間以上使えるものがあります。なかには、車内で充電ができるタイプも販売されているので、昼休みに事務所に戻れない場合は充電方法も確認しておきましょう。
インナー選びでも空調服の効果を高められる
ファンから取り入れた外気で汗を蒸発させることで体温を下げる空調服は、着用しているインナーによって得られる効果が変わります。
具体的には、汗をよく吸い取り、蒸れにくいポリエステルが多く使われている「コンプレッション素材」のインナーを選ぶのがおすすめです。コンプレッション素材とは、肌に触れたときに冷たさを感じる速乾素材で、汗を素早く蒸発させることができるので、空調服との相性が抜群です。
空調服の素材や機能性だけでなく、インナー選びにこだわることで、空調服の効果を最大限に高めることができるでしょう。
まとめ
空調服には、ファンから取り入れた外気で汗を蒸発させることで体温を下げる効果があります。現場作業での熱中症や事故を防止するためにも、空調服を積極的に導入しましょう。ただし、水がかかる作業や防爆エリアなど、空調服が使用できない場合があるので注意が必要です。
なかには、フルハーネスに対応していたり、保冷剤を入れるポケットが付いていたりする空調服もあります。作業内容や環境に合った素材や機能性を備えている空調服を選べば、より高い効果を期待できるでしょう。